議会報告ASSEMBLY REPORT

2009.05.19 カテゴリ:平成21年2月定例会 感染症発生時における市町村との連携について

 東南アジア地域を中心に流行する鳥インフルエンザのウイルスが変異し人から人へ感染する新型インフルエンザが発生する危険性と、その感染爆発(パンデミック)が危惧され、我が国でもその対策が急がれています。
 平成十七年(二〇〇五年)五月に、WHOの世界インフルエンザ事前対策計画に準じ、我が国も同年十一月に厚生労働省が「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定しました。国内各自治体もそれぞれに行動計画を発表し、本県でも平成十七年十二月十五日に知事を本部長とする「新型インフルエンザ対策本部」を設置し、「新型インフルエンザ対策行動計画」が策定されております。
 国と自治体による行動計画が策定されて四年が経とうとしていますが、この間も鳥インフルエンザは発生し続け、鳥から鳥、鳥から人への感染が世界各地で報告されています。
 特に、昨年からは新型インフルエンザに関する報道も多く行われるようになり、パンデミックという言葉も広く国民の間で知られるようになりました。このような中、感染拡大防止や治療薬等の開発など具体的対策はもちろんですが、国民の間で一番求められるのは正確な情報です。これは新型インフルエンザだけではなく、あらゆる未知の感染症や災害が発生した際も同じです。未知の事態に遭遇した際、私たちの間に真っ先に広がるものは不安です。
新型インフルエンザや未知の感染症患者が発生した場合、診断した医療機関の関係者はもちろん、患者本人、その家族や周辺の人はおそらく相当動揺することになります。
 そんな中でも、わずかなりとも「自分たちがどう行動すればよいか」「どこに行けば問題が解決するのか」という情報があれば、それだけで人々の不安が少しは緩和されパニックを防ぐことができます。
 感染症の発生や災害など、私たちが未知の事態に遭遇した場合、まずどこに救いを求め、必要な情報を求めるのでしょうか。やはり、人々が一番頼りにするのは地域の行政機関ではないかと思います。
 ご承知の通り、奈良県は「新型インフルエンザ行動計画」を策定しています。拝見しますと、厚生労働省の行動計画に沿った形で作成され、「フェーズ」という感染拡大の段階ごとに行動計画がきめ細かく記されています。末尾には、フローチャートにて、限定的な範囲で人から人への感染が発生している「フェーズ4・5」の段階における医療機関の対応についても詳しく記されており、県として本当に真剣取り組みがなされていると拝見いたします。
 しかし、県としてのこのような詳細な行動計画があっても、各市町村はどうでしょうか。
 住民にとって、最も身近な行政機関は、やはり自分が住んでいる市役所であり、町役場であり村役場です。感染症や災害などが発生した場合も、住民は何かにつけ身近な役所の支援、情報を頼りにすることと思います。
 ところが、会社などあらゆる組織でそうですが、何か不明な点があると「上の判断を仰ぎます」という場面をよく見かけます。行政機関もその例外になく、同じような場面が見受けられます。
 例えば、市町村役場に何かを質問した場合、「県に聞いてみます」「県の判断を待ちます」、同様に県に聞いてみた場合には「国に聞いてみます」。自分達より上位にある組織の判断を得て回答することは、組織の論理で言えば、決して間違いではないと思いますが、住民生活の危機に関わるような事態で、即時に判断が求められるような際に、市町村役場が「県の対応を待ちます」県に聞いて下さい」では、その職務を果たしていないのと同じです。
このようなことでは住民の不安は緩和されるどころかつのるばかりです。
 私は、感染症対策については、未曾有の事態に遭遇するという観点で、自然災害やテロ、戦争等と同様に、危機管理として行政が対応していくことが重要であると考えています。
 未曾有の事態の際こそ、行政の対応と的確な情報が何よりも人々の心の支えとなり、行政のリーダーシップが最も発揮されるべきであると考えます。
 だからこそ、「国が、県が」というのではなく、あらゆる事態について各市町村独自で行動計画を持つべきであると考え、また県はそれらを各市町村に指導し、統括していく責務があると考えます。
 ワクチンや治療薬の確保、備蓄なども国や県だけでなく市町村レベルで行っていくことも大切ではないでしょうか。
 新型インフルエンザが発生し、パンデミックと言われる感染爆発が起きた場合、人々が勤務先に出勤できない事態になりますと、経済活動だけでなく行政も含め、国内のあらゆる機関の活動が停止してしまいます。
 現在の行動計画により、最悪の事態を発生させないことが大切ですが、万一の場合を想定し、国、県、市町村が手を取りあい、ありとあらゆる対策を講じることは決して無駄なことではありません。
 そして、私が住む吉野郡のような過疎地域では、感染症の発生や自然災害でけが人が出ても、駆け込める医療機関がないに等しい地域もあります。そのような場合、住民が一番頼りにするのはやはり役場なのです。
 また、公的病院や入院設備をもつ医療機関がない地域も県内には多く、それらの地域では個人診療所の先生が大きな役割を果たしてくださっています。感染症や災害が発生した場合、過疎地域ではこれら個人診療所の医師一人に大きな負担がかかることは言うまでもありません。
 新型インフルエンザの場合など、県指定の医療機関や入院機関に患者を搬送するにも過疎地域からは病院までの距離という大きな問題が立ちはだかります。それゆえに市町村でのよりきめ細かい対応だけでなく、地域の診療所や地区医師会との連携が必要であると考えます。県としてはこういう問題をふまえ、新型インフルエンザを含む感染症発生時の県の医療体制と市町村との連携をどのようにはかっているのか、健康安全局長にお伺いします。
 最後に、感染症対策は新型インフルエンザ対策だけではありません。冬場を中心に流行するノロウイルスや海外で発生しているエボラ出血熱、また世界を震撼させたSARSなど、今後どのような形で新しい病気が発生するかはわかりません。かつて大阪・堺市でO157が検出されたとき、今までの集団食中毒とは違う、その激烈な症状に市民の間に大きな不安が広がりました。私たちは生きている以上、常に感染症や未知の病気が発生する危険性と隣り合わせです。
 幸い、今に至るまで新型インフルエンザは発生していませんが、インフルエンザ流行の季節が終わったらそれでおしまいではありません。新型インフルエンザを含め、今後もあらゆる感染症対策につき、危機管理の視点から絶えず真剣な取り組みを行っていただきたいと強く要望いたします。
 医療問題は、不幸な事故や事件が起き、世間の話題になった時だけ対処をすればよいものではありません。奈良県におきまして、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」、そんな医療政策が取られないことを心から願い、私からの質問とさせていただきます。

■生活安全局長からの回答

 新型インフルエンザなどの感染症対策の役割分担については、発生の予防、拡大の防止など市町村の圏域を超えた広域的な対応が必要であることから、基本的には、県がその業務を所管することとされているが、住民への情報提供や相談窓口の設置、食料品や生活必需品などの確保、一人暮らしの高齢者や障害者への支援など住民の生活支援に関する対策は市町村に行っていただく必要がある。
 現在、県では感染症に対する医療体制を確保するため、県立医科大学付属病院、済生会中和病院を感染症指定医療機関に指定。また、新型インフルエンザについては、指定医療機関だけでは病床不足が見込まれるので、民間病院を含めた県下53病院の協力を得て入院患者を受け入れることとしており、21年度予算では、入院医療機関における個人防護具や人工呼吸器を整備するための費用として、7700万円あまりを計上しているところ。
 一方、市町村の取り組みとしては、先ほど申し上げたように住民生活にかかわる幅広い対策が必要になるため、その円滑な実施のためには各市町村が新型インフルエンザ対策行動計画を策定することが必要と考えている。
 しかし、市町村独自の行動計画を策定しているのは下市町のみとなっている。このため、すでに保健所単位で市町村等との連絡会議を開催し、情報の共有や対策の検討を始めている。
 今後、市町村の行動計画の策定を支援するなど一層連携を密にして新型インフルエンザ対策を進めてまいりたい。

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