議会報告ASSEMBLY REPORT

2016.01.13 カテゴリ:平成27年12月定例会 災害救助、被災者生活再建支援に関する条例の制定について

我が国は2011年に東日本大震災という大きな災害を経験しましたが、地震や火山噴火による被害、雨や台風による土砂災害や浸水被害は毎年のように発生しています。

奈良県におきましても、2011年、紀伊半島大水害により吉野郡一帯が大きな被害を受けました。まず冒頭、改めまして犠牲になられた方に思いを馳せ、ご冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災地域である吉野郡選出議員として、さらに地域の発展に力を尽くしますことをお誓い申し上げます。

さて、紀伊半島大水害に対しましては、県内10市町村に災害救助法が適用され、被災者生活再建支援法についても五條市、天川村、野迫川村、十津川村の4市村に適用されました。国や県による支援、また各地からいただきました義捐金に助けていただきながら、被災地域では被災者の生活再建・復興作業が進められてきました。

災害救助法は国が地方自治体と協力し、応急的に必要な救助を行うものです。一方、被災者生活再建支援法は生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県と国の負担により支援金を支給し、その生活の再建を支援するものであります。しかし、これらの法律の適用には様々な制限があります。

たとえば災害救助法に基づく応急修理制度では、家屋の「全壊」「大規模半壊」と「半壊」で異なり、半壊の場合は所得制限があります。

 また被災者生活再建支援法については「全壊」と「大規模半壊」が対象になっていますが「半壊」は対象とされていません。さらに両者とも、市町村の人口に応じて、一定規模の住宅被害の発生を要件としており、たとえば被災者生活再建支援法の適用がない自治体においては、適用された地域と同等の被害を受けている家屋があったとしても支援を受けることが出来ません。

紀伊半島大水害の際にも、黒滝村は被災者生活再建支援法の適用から外れたため、他の適用地域と同等の被害があったにも関わらず、法に基づく支援を受けることが出来ませんでした。

この件について、奈良県は臨時的に独自の制度を設けて支援を行うとともに、内閣府に「被災者生活再建支援法の適用対象の拡大」という要望を平成23年11月に提出されておられます。私自身もこの部分には矛盾と憤りを感じており、同じ被害を受けた人は等しく救済されるべきであると考えます。

特に近年は国内各地で震災や台風、噴火などの大規模な自然災害が続いているうえに、長引く不況や少子高齢化で我が国の財政はひっ迫しており、国の財源にも限りがあることも確かです。

そこで、これら国による被災者支援の隙間を埋めるべく、大規模災害に見舞われた自治体の中には、災害救助法や被災者生活再建支援法による支援をベースに、独自の支援策を設けているところがあります。

栃木県では2012年に起きた竜巻被害で被災者生活支援法の適用を受けられなかった市町村があったことから、2013年栃木県と市町で「栃木県被災者生活再建支援制度」を創設しました。県と市町がそれぞれ1億円ずつ拠出して基金を造成し、国の法律適用外の地域で、住宅全壊・大規模半壊1世帯以上の被災があった自然災害を対象にしています。

また今年の9月に起きた東北豪雨で甚大な被害を受けた茨城県でも、半壊家屋の支援に対する所得制限を撤廃したとのことです。

国による支援に加え、更に自治体独自の取り組みを行うことに、私は真の地方自治の姿を感じ、非常に感銘を受けましたが、私はさらにそこから一歩踏み込んで、国の法律と並行する形で、自治体独自の取り決め、つまり災害救助、被災者支援に関する法の横出し条例を制定できないかと考えています。

予測できない事態が発生するのが自然災害ですし、同じ規模の地震や降水量であっても、各地域の特性によって被害状況もそれぞれ異なってきます。よって、その時その時の被害状況に応じて臨時的に制度を設けて支援することも私は非常に重要なことだと思いますが、何かが起きてから対応するのではなく、自治体としての被災者支援にかかる基本的指針を設けておくこと、速やかに支援体制を整えるためにも、国の災害救助法では補えない県自身の災害救助、被災者支援の基本条例が必要ではないでしょうか。

私自身は県会議員ですので、国の法律のあり方については国会議員に知恵を絞っていただくとして、県議会議員として、県の立場として公平な災害支援という観点で何が出来るかを考えたとき、やはりこの奈良県の地政学的な特性を考慮した、法律では補えない自然災害に対する取り決めが必要ではないかと考えます。

色々と調べていましたところ、新潟県が「新潟県災害救助条例」を制定されていました。

これは昭和39年に公布・施行されており、「災害救助法が適用されない災害に際し、市町村が応急的に必要な救助を行う場合に県がその費用の一部を負担する」として、救助の実施要件で国の法基準を緩和することも可能にしています。

救助の種類は災害救助法に比べて制限されているとのことですが、しかし、国の法律の谷間に陥る被災者が出ないように、県民の暮らしを守ろうという新潟県の姿勢がこの条例に現れているとして、私は高く評価したいと思います。

この条例については、新潟県は豪雪地帯ですので、豪雪時の適用が多く、救助の種類としては屋根の雪下ろしの経費が多いとのことでした。これぞまさに雪国新潟という地域の特性、ニーズに沿った条例であり、地域で求められる内容ではないかと考えます。

先にも述べましたが、災害が発生した際、状況に合わせて制度を作ることも大事だと思います。しかし、その都度その都度の対応していたのでは、財源の面でも、また実務の面でも、どうしても遅れが出てしまいがちです。災害救助法の下、都道府県では災害救助基金の積み立てなど、災害時への備えが定められていますが、国の法律だけでなく、県として災害に対する基本条例を定め、地域の状況に応じて柔軟な対応が行えるスキームを用意しておくことこそが、県民の命と生活を守ることにつながると考えます。

奈良県は、南部に山間地、北中部に盆地を有し、これまでから台風の季節には南部で土砂災害、北中部は大雨による河川氾濫などの被害が多発してきました。さらに、南部地域では過疎化が進んでおり、マンパワーも不足していますので、救助や避難についても人口が多い地域と同じ方針では対応できないことも考えられます。

私は自分のふるさとでもある吉野郡で起きた紀伊半島大水害の教訓を、何らかの形で今後の県民の命を守るための施策につなげていくことが、犠牲になられた方の思いに報いることでもあると思っています。

本県の地域特性を考慮した独自の災害救助、被災者生活再建支援に関する条例があれば、私は救助や支援にかかわるすべての組織の対応がよりスムーズになると考えますが、県のお考えをお聞かせください。

 

(知事答弁)

本県は比較的災害が少ない県であるといわれますが、大和川大水害や紀伊半島大水害など大災害が発生した経緯があります。また、南海トラフ巨大地震の発生も懸念されており、災害への備えが必要なことはいうまでもありません。災害時には、人命救助を最優先すべきですが、それとともに多くの被災者への支援も重要であると認識しています。

災害による被災者への主な支援制度としては、災害救助法と被災者生活再建支援法の2つの法律があります。まず、被災者生活再建支援法に基づく支援制度ですが、議員お述べのとおり、市町村ごとに住宅全壊世帯数により適用の判断がなされ、例えば、府県をまたいで支援法が適用される規模の災害であっても、2世帯以上の全壊被害が発生した市町村でなければ対象となりません。このため、支援法が適用される災害であっても住宅全壊世帯が1世帯の市町村は対象とならず、被災者の居住地域による不均衡が生じる可能性があります。

紀伊半島大水害の際には、住宅全壊が1世帯で支援法の対象とならなかった黒滝村の被災者に対し、不均衡是正の観点から県独自の臨時的な支援措置を講じました。また、支援対象外の半壊世帯が南部地域で多く発生しましたが、過疎化の一層の進展を抑制する目的で、県独自に半壊世帯への支援も行ったところです。このように、単数全壊世帯又は半壊世帯への支援が行われない不均衡が起こるのはどういうことかということになりますが、これは自然災害の被害に対し、特に私的財産の損害に対し、どこまで公的支援を行うべきかについての基本的な考えについて、議論が残っているからだというふうに感じております。

次に、災害救助法を補完する独自制度のご提言がありました。新潟県の例を挙げられましたが、新潟県の他には、全国的にもあまり例を見ない制度です。これは、災害救助法の適用基準が、「人口5千人未満の市町村については、住宅の全壊30世帯以上」といった住宅被害件数による基準だけではなく、「多数の者が生命又は身体に危害を受け、又は受けるおそれが生じた場合であって」、「災害が発生し、又は発生するおそれのある地域に所在する多数の者が、避難して継続的に救助を必要とすること。」という住宅被害によらない基準が規定されているため、比較的柔軟な対応が可能となっていることが理由ではないかと思われます。

議員もご指摘のように、速やかに支援体制を整えるため、あらかじめ県の条例による被災者支援にかかる指針を設けていくことも、ひとつの考え方であるとは思いますが、災害救助法と被災者生活再建支援法の違いを認識した上で、あらかじめ指針で基準を設けるという方式は、一度救助対象の線を引いてしまうと、客観的な線になって、それを越える災害が起こった場合に、なかなか救助の対象を越えるのが難しいといったようなことが懸念されます。多種多様な被災形態に応じて最適な支援を行うためには、状況に応じた臨時的措置の方が柔軟な対応が可能な場合もあります。また、支援法適用時の不均衡是正だけでなく、そもそも支援法が適用されない小規模災害の被災者や半壊世帯、床上浸水世帯への支援の在り方、財源は誰がどのように負担すべきなのか、自然災害に対する公的な補償責任はどのような場合発生するのか、ある部分は保険の対象にすべきではないのか、また市町村の意向はどうなのかなどの議論が残っているのではないかと思います。

本県では紀伊半島大水害の際に、被災者生活再建支援法適用における具体的な目の前にあった不均衡是正を国に要望しましたが、全国知事会からも同様の要望が行われています。このような指摘も踏まえ、国では、「被災者に対する国の支援の在り方に関する検討会」を設置し、被災者支援の在り方全般についての議論が進められています。県としては、市町村の意向はもとより国の議論の行方を確認しながら、議員お述べの趣旨も踏まえ、本県に最適な災害救助及び被災者支援の在り方について、検討を行いたいと考えています。

 

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