議会報告ASSEMBLY REPORT

2011.11.30 カテゴリ:平成23年11月定例会 紀伊半島大水害からの林業の再生と振興について

 九月に発生した紀伊半島大水害によって奈良県南部は甚大な被害を受けました。犠牲になられました方に心から哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げますとともに、私は吉野郡選出議員として被災地域の完全復旧に全力を尽くすことをお誓いいたします。
 また、全国から義援金や支援物資をいただくとともに、多くの方がボランティアとして復旧のお手伝いに駆けつけてくださいました。私は奈良県南部の住民のひとりとして、皆様のあたたかい思いに、この場をお借りして心から御礼を申し上げます。
 そして人命救助の先頭に立ってくださった自衛隊、消防、警察のみなさん、また県知事を筆頭に県内自治体職員のみなさん、今回の災害対応に尽力してくださったすべての皆さんに感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
 さて今回の紀伊半島大水害の被害により、南和地域が日ごろから抱えてきた課題が浮き彫りになりました。
 崩壊した土砂の量は、およそ1億立方メートルと、戦後、国内で起きた大雨による土砂災害では最大の規模であったとのことであります。その大規模な山崩れで道路が寸断され、多くの地域が周辺から孤立してしまいました。また土砂が川を堰き止めたことによって出来た「天然ダム」が県内外に大きな衝撃を与えました。天然ダムは「土砂ダム」として盛んに報道され、台風通過後もしばらく続いた不安定な天候により、決壊が警戒されました。結果的には心配された大規模決壊は起こらず、それ以上の被害も発生しませんでしたが、地域住民に与えた不安は莫大なものです。
 これら大規模な山崩れの原因は山林の「深層崩壊」であるとされています。通常、土砂災害は、山の斜面を覆う厚さ数mの落葉層や土壌層が滑り落ちる「表層崩壊」と言われる比較的規模の小さなものが多いようであります。これに対して「深層崩壊」は、大量に降った雨が土中に沁み込んで岩盤の割れ目に貯まり、一定の限界を超えると、その水圧に耐えられなくなった岩盤が剥がれ、数十mから場合によっては百m近い厚い地層ごと一気に滑り落ちるというものです。深層崩壊が一度起きれば、その被害が甚大なものになることは、今回の災害で痛感させられました。表層崩壊では、樹木などを植えるなどして表層を固定する方法が取られてきましたが、 深層崩壊の具体的な対策がないのが現状のようです。
また、紀伊半島の台風被害は、例年のように繰り返されています。十津川村では、千八百八十九年の大水害で百六十八人が死亡、村落の大部分が壊滅状態となり、約二千五百人の村民の方が北海道に移住されました。すなわち,十津川流域は、斜面岩盤が弱く、降水量が記録的に多いといった大規模斜面崩壊の発生危険度の高い地域と言え、早急な対策を講じていく必要があるのです。
 県でも十一月十五日に行われた国の各省庁等に対する紀伊半島大水害にかかる災害復旧・復興に関する要望でも、「県と国が一体となった深層崩壊メカニズム解明と対策研究の推進」を要望されています。私自身もぜひこの点につきましては、国に対しても万全の対策を求めていきたいと思います。
 ご承知の通り、奈良県は県面積の約8割が山林という県です。国に対する要望も必要なことではありますが、今最も求められることは、県自らの取り組みではないでしょうか。このような被害の直後だからこそ、自分の足元を見直すこと、自身の手で立ち上がる努力が大切であると考えます。地域に暮らすものだからこそわかること、地域に精通したものの目で、地域全体のインフラを立て直していく必要があるのではないでしょうか。
 私はこの場で再三、奈良県南部の林業振興を訴えてまいりました。特に防災の観点から、山林の保水機能についても質問の中で何度か言及させていただきました。今回の災害はまさにこの山林の保水機能という面について考えさせられる出来事でした。そこで、これは提案なのですが、山を知り、山がわかる林業従事者を県の山林事業の中でもっと活用していただきたいと思います。林業従事者は日々の山林管理のみならず、今回の復旧作業にも尽力しておられます。林業に従事している人たちは心から山を愛し、誇りを持って山に携わっています。私はぜひともこの彼らの知識や経験を今後の対策の中で活用していただきたいと考えております。専門家といえば、学者や土木行政のプロを思い浮かべがちですが、林業従事者も山の専門家であり、山林維持の最前線に立つ人たちです。林業従事者の県施策における積極的な活用を進めることで、奈良県が山の防災と保全、林業振興をリードする県になってほしいと、私は心から願っています。知事にはその思いをぜひお汲み取りいただき、奈良県の今後の山林管理について、防災面をふまえた森林整備や林業振興の取組方針についてお聞かせいただきたいと思います。
 次に、今回の土砂崩れにより住民の生活に大きな打撃を与えたのが道路の寸断です。
奈良県南部では今回の紀伊半島大水害だけでなく、これまでも災害で道路が頻繁に寸断されてきました。平成21年12月に出されました「なら安心みちネットプラン」によりますと、平成十六年から平成二十年の五年間の崩土や落石の回数は、県内の他の国道や路線が二十回前後なのに比べ、国道百六十八号支線は四十七件とずば抜けて多く発生しております。
 またこのプランには「南部山間地域でひとたび災害による通行止めが発生すれば地域住民の生活・経済活動に支障をきたすとともに観光交通にも多大な影響を及ぼすことになります」とも書かれています。この記述は平成21年の時点のものですが、まさに今回の被害状況そのものではないでしょうか。まるで今回の災害の予言です。それだけに、この被害はある面、軽減できた部分があったのではないかと思われます。台風十二号は予想を超える雨量であったことは確かですが、やはりどこかで対策が手薄だったのではと感じざるを得ません。
 そして、道路の維持管理に大きく貢献しているのが地域の土木事務所であり、奈良県には7つの土木事務所があります。その中でも吉野土木事務所と五條土木事務所をあわせると、管内面積は県全体の六十%を占め、管理トンネルの延長は県全体の七十九%、箇所数で七十五%となっています。また、橋梁延長も県全体の五十二%を占め、道路防災総点検箇所で七十四%、土砂災害危険箇所で25%と広い面積の中で多くの箇所を所管している現状となっています。さらに、職員の緊急出動回数を見ても、吉野土木事務所と五條土木事務所をあわせ、平成二十年度で二百十五回、平成21年度で三百八回、平成二十二年度で二百七十一回と頻発している状況であります。このようなデータから、吉野土木事務所と五條土木事務所の皆さんが日々ご苦労されていることがおわかり頂けると思います。
 そしてこのような中、紀伊半島大水害からの復旧復興、市町村支援を行う体制強化として、吉野土木事務所にも復旧復興課が設置されるとともに、五條土木事務所に十津川村復旧復興課と五條南・野迫川村復旧復興課が設置されました。
道路の維持管理は自然災害という私たちが予想できないものとの戦いです。また新しい道路を作ったところで、それを管理する体制が十分でなければその道路は使命を果たすことは出来ません。道路だけでなく橋も同じであります。そういう意味では、復旧・復興にむけた組織体制の迅速な強化は、大変評価出来るものでありますが、防災の観点からは日常の組織体制の強化も重要であると考えますので、吉野土木事務所・五條土木事務所の組織体制の強化を要望いたします。
 さて、このような土木事務所の職員の方々のご努力もあり、日々、南部地域の被災した道路が復旧しています。そして、今後の復興にあたり、県は「災害に強い紀伊半島アンカールート」として、その早期整備を国に要望しておられます。具体的には、国道168号の「地域高規格道路五條新宮道路」の直轄指定区間への編入や百六十九号「新伯母峰トンネル」の早期整備などであります。確かに、被災地域の孤立や物資輸送・救急活動ルートの分断を防ぐためにも、紀伊半島アンカールートの確保は必要・不可欠なものであることは言うまでもありません。だた、県が国に提案されているルートが今すぐに完成するということは難しいのではないでしょうか。今しばらくは、現在の国道を通行せざるを得ないと思います。そうであれば、如何に現在の国道の安全を確保するのかが喫緊の課題となってきます。そこで、知事にお伺いいたします。南部地域の方々は、現在の道路を「命の道」として利用していかざるを得ないことを踏まえ、道路の安全・安心についてどのように取り組んでいこうと考えておられるのでしょうか。
 また今回の災害では死者十四名、行方不明者十名にのぼり、その犠牲者の中に天川中学校に勤務していた大原千幸(ちさ)先生がおられます。大原先生は天川中学校に隣接する教員住宅に住んでおられましたが、その住宅ごと濁流に流され犠牲になられました。大原先生は英語の先生として生徒たちにも慕われ、熱心に指導に励んでおられたそうです。地域に溶け込み、教育に情熱を燃やしておられた若い命がこのような形で奪われたことが私は残念でなりません。生徒たちの悲しみ、ご家族のお気持ちを考えると胸がつぶれる思いがします。この場で改めまして大原先生のご冥福をお祈り申し上げたいと思います。
 大原先生は九月三日、教員住宅の二階から「一階が浸水している」と救助を求めて百十番通報しておられます。中吉野署の警察官が急行したそうですが、時すでに遅く、住宅は流され先生の行方もわからなくなっていたとのことでした。
ここで注目していただきたいことは、大原先生が助けを求めたのが地域の人や友人ではなく百十番、つまり警察だったということです。これは私の推測ですが、大原先生は他県から来られた方ですので、このようなときにどうすべきか、どこを頼るべきか、判断がつきかねていたのではないでしょうか。すがる思いで百十番されたのだと思います。残念ながら救助は間に合いませんでしたが、大原先生が百十番したのは、警察が身近で頼れる存在だからこそだと思います。防犯面でも防災面でも警察は本当に心強い存在なのです。
 県警では、平成二十年三月に「御所警察署」を「高田警察署」に、「十津川警察署」を「五條警察署」に統合するなどの再編整備をされました。さらに、今後、「天理警察署」と「田原本警察署」、「桜井警察署」と「宇陀警察署」、そして、「吉野警察署」と「中吉野警察署」の統合が計画されています。「吉野警察署」と「中吉野警察署」の統合では、警察署が九十人程度となり、初動捜査体制が強化されるほか、より地域に密着した活動が可能となるようです。また、統合される吉野警察署庁舎を分庁舎として存続させ、運転免許証の更新事務や許認可業務等の窓口サービス業務も継続することになっています。さらに、その他の交番、駐在所も現状の体制を維持することになっています。
 何かあれば隣近所で団結し、住民同士で自衛する仕組みがあった時代と違い、今は地域社会のつながりが本当に薄くなっています。先ほどの大原先生もそうですが、縁もゆかりもない地域で、単身で生活をされる方も多く、身寄りのない高齢者も増えているのです。そのような人々にとって、警察はいざというとき本当に頼れる公的機関なのです。
 私は人が地域で生活する上で一番求められることは「安心」だと思います。今回の警察署の再編を不安に思われる住民の方の声を聞くことも事実ではあります。この再編計画の本来の趣旨を踏まえ、住民の方に、「治安が良くなった」「窓口サービスは前と変わっていない」と思っていただけるように、警察署の再編を進めていただくよう、強く要望いたします。
 一方、先日、「県有施設の中部地域再配置構想」が公表されました。この構想のめざすものは「維持管理経費の節減」「人員の適正配置などの業務の効率化」とされており、基本的には施設の集約で、県有資産の整理を進める内容であります。
確かに、この構想で整理の対象とされている施設の多くは築後四十年程度を経過して老朽化が進行し、耐震性もなく、また、職員数の減少の影響で、各出先機関の機能を維持することも困難になっているとのことです。
 そのような状況に対して、既存の未利用施設を活用して、施設を集約することで、コストを抑えながら、施設の再配置を進めることは、県の行財政改革を進める目的に適い、県の財政状況を鑑みると、時機を得た取り組みであると考えます。
この構想では、主として中部地域にある県有施設を対象として、県税事務所、福祉事務所、農林振興事務所、土木事務所は橿原市の旧耳成高校へ、保健所は桜井土木事務所に集約されることになっています。これにより、大和高田市、宇陀市及び吉野町では、従来あった施設が廃止される予定であり、その機能は橿原市と桜井市に移ることとなります。
確かに、この構想により、老朽化した施設への対応が進むこととなりますが、一方で住民サービスについて、懸念されることもあります。
 今回の構想の中で廃止されることとなっている高田総合庁舎や宇陀土木事務所等は長年に渡り、各地域において重要な役割を果たしてきた施設であり、これらが廃止されることで、住民に不便をかけることにならないかということであります。
こうした懸念に対し、構想では、施設の廃止される地域には、出張所等を設置することで利便性の確保を検討されるとのことです。
 再配置を進めることに私も異論はありませんが、そのために住民に不便をかけるようなことがあってはならないと考えます。公的機関の存在は住民にとって、いざというときに頼れる存在なのです。つまり、駆け込み寺でもあるのです。今まであったものがなくなることは、住民にとって大きな不安であると考えます。
そこで、総務部長にお尋ねします。財政状況が厳しさを加える中で、この再配置構想に取り組むことが必要であることは理解できますが、それによって、住民サービスの低下に繋がらないよう、どのような対応を検討されているのか、お伺いします。
 私は今回、林業の再生と振興、南部地域の道路の安全・安心、公的機関の配置について質問及び要望をさせていただきました。質問を考えながら、国に頼るだけでなく、県の事情に精通したもの、地域事情をよくわかるものによる組織を構築すること、県政に携わるもの全てが知恵を出し合い自立した体制を築くことが大切ではないかと思いを新たにした次第です。
紀伊半島大水害は奈良県南部地域に大きな爪あとを残しました。しかし、南部地域は、この災害から日々立ち上がっています。応急仮設住宅も完成し、その他様々な被災者への生活支援や生業・産業の支援も行われています。しかし、まだまだ被災前の生活とはほど遠いのが現状です。今後とも、被災者の声を十分に汲み取っていただき、被災地に真に必要な支援をお願いしたいと思います。今回の災害を風化させてはいけません。私たち県議会議員一人ひとりも、この災害を教訓に、真剣に県民生活を守るために必要なこと、いま何が大切なのかを考えていかなければならないと思います。
 その答えを、議会を通じて一つ一つ生み出していくことが、私たち県議会議員の使命ではないでしょうか。みなさん、今こそしっかりと県の課題に向き合っていきましょう。それが今回の災害で犠牲になられたみなさんの思いに答えることだと強く訴えさせていただき、質問を終わります。
 

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