議会報告ASSEMBLY REPORT

2009.05.19 カテゴリ:平成21年2月定例会 森林・林業について

 奈良県は、日本有数の多雨地帯である紀伊半島のほぼ中央に位置し、県土の77%が森林に覆われた緑豊かな美しい県です。この豊かな森林のもと、木材の生産活動は、日本最古とも言われる「吉野林業」に代表されるように、本県の基幹的な産業として、山村をはじめ周辺地域の暮らしを支え、県の発展にも大きく寄与してきました。
 森林は木材産業の場としてだけでなく、「緑のダム」「天然のダム」とも言われるように、山々に降った雨を蓄え、河川の渇水を防いだり洪水を緩和する役割を果たすほか、水質の浄化機能も備え、その自然の大きな力によって住民の生活を守る役割も果たしています。
 私たち県民は日々の暮らしの中で、知らず知らずのうちに、その恵を受けて生活しているのです。
 特に、日本最大の降雨量を誇る大台ケ原を源流とする吉野川の豊かな水は、大和平野へ分水として送られ、農業用水などとして利用されています。
 しかし、昨今の森林や林業を取り巻く情勢は、国産材の自給率こそ若干上向きになりつつあるものの、長引く木材需要の低下や木材価格の低迷などから、間伐をはじめとする適切な手入れが十分に行われなくなっている現状があります。県下各地で手入れが遅れたスギやヒノキの人工林が増加しているのです。
 加えて、森林所有者の高齢化や不在村化などによる経営意欲の減退や、森林で手入れを行う林業就業者の減少など、極めて厳しい状況が続いています。
 このような状況が続くと、森林の荒廃や景観の悪化だけでなく、先ほど述べたような森林が持つ機能、つまり水質保持や水量調整の機能が十分発揮できなくなるのではないかと強い懸念を覚えています。
 たとえば、私が住んでいる吉野郡では近年、吉野川に渇水や悪臭、カビ臭など一昔まえには考えられなかったような問題が発生しています。
 地球の温暖化や環境の悪化など、様々な原因が考えられますが、しかし、かつてあれ程豊富な水量を誇り、県民生活を支える重要な水脈であるはずの吉野川が、この数年で極端にその水位を低下させ、水質を悪化させていく様子に、吉野川上流の森林機能の低下とその影響を感じざるを得ません。
 事実、吉野郡での林業は衰退著しく、従事者も急速に減少、高齢化しています。林業従事者たちは、これまでも後継者育成を第一に考え、若い力を林業にと、様々な努力を重ねてきましたが、地域全体の過疎化が進行する中、やはり現実は厳しく、思うような人材育成が出来ていません。
 経済不況による派遣切り、若者の失業が話題になる中、「農業、林業への就業を希望する若者が増加している」という一見明るい報道も見聞きしますが、しかし県内の林業従事者の間ではこのような報道に希望を抱く声もわずかで、「実際に募集をしても希望者がないのでは」「経済が好転すればまた離職するのではないか」と冷静に捉える方が大半です。
 自然の営みの中、林業の重要性を実感し、誇りをもって働いてこられた方たちが、その仕事に明るい展望を持てないという現状は非常に悲しい事態です。
森林機能の低下、林業従事者の減少は、単に景観の荒廃にとどまらず、私たちの生活を支える「水」という大切な資源にも大きな影響を及ぼすものであり、県民の暮らし全体に関わる問題であるということを、再度しっかりと認識する必要があるかと思います。
 私は奈良県民として、県土の77%という美しい緑を子供たちに残し、豊かな水という自然からの財産をぜひ未来につないできたいと考えています。
 県と林業従事者、そして県民が一体となり、森林を取り巻く問題について、今こそ真正面から取り組む時期であると感じています。
 我々県民にとって身近な環境資源でもある森林の整備と林業の活性化に向け、県として平成二十一年度の施策をどのように進めようとされているのか。
 行動計画や目標、人材育成など具体的な方針を含め、知事にお伺いします。

■荒井知事からの回答

 森林・林業についてのお尋ねでございます。来年度予算の施策の進め方、具体的な方針という内容のお問い合わせでした。議員お延べのように、森林は、木材生産のほかに県土の保全、水源のかん養、レクリエーションの場の提供、生物多様性の保全、地域温暖化の防止など、県民生活と深く関わる、様々な機能を有しております。その役割は極めて重要だと思っております。
 こうした森林の持つ機能を十分発揮させ、持続可能な森林づくりを進めるにはどうすればいいかということでございますが、奈良県の森林をどのようによくするか、その方向性を明確にしていく必要があろうかと思います。
 新年度におきましては、今後の奈良県の森林づくりの基本指針を策定していきたいと思っております。
 この基本指針では、森林を、木材資源の循環利用を図る林業生産林と、森林環境の維持、保全を図る環境保全林に区別することを、基本的な枠組みにしようとしております。それぞれの森林の機能に着目した森林づくり、目的に応じた施策展開を図っていこうと、効率化をはかろうということでございます。この指針に過程において、目指すべき奈良県の森林の姿を模索していきたいと思います。
 具体的な施策につきましては、いろいろでてくると思いますが、まず、森林活性化のための競争力強化という観点でございますが、川上の方では、作業路の開設や、高性能林業機械の導入等は従来から要望がございますし、施策を実行しておりますが、引き続きの支援を行い、県産材の安定供給を促進するということを継続していきたいと思います。
 また、県産材の利用促進、川下の方でございますが、奈良での住宅建設に県産材を使っていただこうということをもう少し進められたらなと思います。意欲的な事業体を中心に産直住宅建設システム構築というような名の下で県産材の利用促進を図っていきたいと思っております。
 さらに、担い手の中で林業事業体の育成と林業就業者の確保・育成が大事でございます。本県と条件が類似しております徳島県を模範、参考にいたしまして先進的な素材生産を行っている事業体へ、中堅の林業就業者を派遣して、生産から出材までの実践的な研修を積ませようかと思っております。奈良県の林業を担うリーダーづくりにも力をいれたいと思います。
 その他、森林の機能の多様性を反映して、野生鳥獣被害防止でございますとか、生物多様性の保全でございますとか、県民との協働による森林づくりでございますとか、消費者ニーズに合致した新しい商品の開発でございますとか、森林組合の経営改善といったような数々の課題、あるいは施策の方向がございます。指針の策定に併せて取り組む方向と内容を明確にしていきたいというふうに思っております。

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